45 調査報告の書籍出版について 日本心理学会教育研究委員会は,日本心理学 会が,研究の成果を社会に還元し,社会のニー ズに応じた心理学教育や,さらに高校生以下 に対する心理学教育について検討するために, 2011年に発足しました。その中の調査小委員会 は,市民の心理学へのニーズや心理学教育の現 状を把握する役割を担ってきました。 本稿で紹介する調査小委員会では,市民,小 中高教員,大学,心理学会員,心理学以外の学 会の会員を対象とした5回の調査を行い,その 結果を日本心理学会のウェブページに公開し てきました(https://psych.or.jp/about/iinkai_ kyoiku/)。さらに,その調査結果を,会員だけ でなく,広く社会の人たち,高校生にわかり やすく伝えるために,心理学叢書の1冊として 『心理学って何だろうか?:四千人の調査から 見える期待と現実』として,誠信書房から出版 しました。ここでは,本の紹介をかねて,これ までの調査結果の一部を紹介します。 1章「誰もがみんな心理学者?:日常生活で 役立てるために」(楠見孝)では,20 〜 60代の 2,107人の市民に対する調査に基づいて,市民 の心理学への関心は高いが,知識や理解は必ず しも十分でないこと,さらに,心理学へのニー ズを探りました。そして,市民が考える心理学 と学問としての心理学のギャップはどこにあ り,どのようにそれを解消するかについて述べ ました。 2章「学校の先生に使ってほしい・教えてほ しい心理学」(楠見)では,小中高の1,548人の 先生に対して調査を行い,教員が持つ心理学の 知識や,心理学は教育実践に役立つか,さら に,小中高で心理学を教えることの賛否につい て検討しました。教員の心理学知識は市民より もやや高く,高校以下で心理学を教えることに ついては6割が賛成をしていました。 3章「大学ではどんな心理学を教わるの?: 深く学ぶために」(岡田謙介・星野崇宏)と4 章「心理学の卒業論文は社会で役立つのか?: リサーチスキルの現代的意味」(山祐嗣)では, 全国443大学の調査の結果に基づいて,心理学 教育の現状と,心理学教育(とくに卒業論文の 作成)を通して学生のリサーチスキルを育成し ていることについて,解説・議論しています。 5章「心理学者は誰の心も見透かせるの?: 学問とニセ科学の違い」(菊池聡)では,日本 心理学会員434人の調査の結果を踏まえて,心 理学における科学/疑似科学の区別や,誤解を 解くための活動の必要性などについて論じてい ます。 6章「心理学は他の学問分野から引く手あま た:学問の垣根を越えて」(三浦麻子)では, 心理学会会員調査の結果のうち,共同研究の現 状に関するデータと,他の学問分野の研究者 717人に対する調査データを踏まえて,他分野 との共同研究が多くはない現状と,共同研究 が,心理学についての理解度や学問的,社会的 必要性の評価を高めていることを示していま す。 さらに,コラムⅠ「心理学者に会いに行こ う!:市民と高校生のための心理学公開講座」 (池田まさみ・邑本俊亮)では,講演出版等企 画小委員会の活動を紹介し,コラムⅡ「心理学 ミュージアムへようこそ!」(重森雅嘉・武田 美亜)は,博物館小委員会が運営しているコ ンテスト形式の展示による心理学バーチャル ミュージアムの現状と今後について紹介してい ます。 最後に,大学調査および会員調査にご協力い ただきました会員の皆様にお礼申し上げます。 また,委員会の発足以来お世話になりました当 時の日本心理学会担当常務理事・教育研究委員 会委員長の仁平義明先生,同じく担当常務理事 の内田伸子先生をはじめ常務理事の先生方,調 査小委員会第1期の益谷真委員をはじめとする 委員の先生方に感謝申し上げます。 (調査小委員会委員長・京都大学教授 楠見 孝)
心理学ワールド 83号 教育研究委員会 調査小委員会から 楠見 孝 調査小委員会委員長(京都大学) | 日本心理学会
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